MTM方式でサッカーの練習メニューを組んでいるけど、正直むずかしい
試合で出た課題をトレーニングに落とし込む「MTM方式」を取り入れてから、練習の組み立てに根拠が持てるようになりました。でも実際に現場でやってみると、思い通りにはいかないことだらけで、毎回試行錯誤の連続です。今日はそのリアルな話をまとめておこうと思います。
目次
MTM方式とはどういう考え方か
MTMとはMatch(試合)・Training(トレーニング)・Match(試合)の頭文字をとったもので、試合で出てきた課題をトレーニングで改善し、次の試合で検証するというサイクルを繰り返す練習の考え方です。
たとえば試合でサイドからの攻撃が単調だったなら、次の練習ではサイドでの突破や崩しの局面を切り取ったトレーニングを組みます。選手も「あのとき試合でうまくいかなかったやつだ」と文脈が見えているので、なぜその練習をやるのかが伝わりやすいんですよね。
指導者の主観や「なんとなく今日はこれをやろう」という感覚ではなく、試合という事実から課題を引き出してトレーニングに結びつける。そういう根拠のある練習メニューを組めるようになりたくて、MTM方式を意識するようになりました。
考え方としてはとても合理的で、選手にとっても意味が見えやすいという利点があります。ただ実際に現場でこのサイクルを回していくと、理屈どおりにはいかない場面が山ほど出てきます。コーチ歴が長くなってもこの難しさは変わらないし、むしろ深く考えれば考えるほど悩みが増えていく感覚があります。
試合から課題を抽出するのが思ったより難しい
MTM方式の出発点は「試合を見て課題を見つけること」です。ところがこれが思った以上に難しくて。試合中はポジション修正の声かけ、交代選手の確認などやることが多く、冷静に全体を観察する余裕がなかなかありません。
後から振り返ろうにも記憶は曖昧で、「なんとなく前からのプレスがはまってなかった気がする」くらいの感想になってしまうことがあります。動画が撮れていれば見直せるのですが、毎回撮れるわけでもないですし。課題の抽出精度が上がらないと、そのあとのトレーニングの設計もずれていってしまいます。
さらに難しいのが、課題が複数重なっている場合です。ボールを奪われる場面が多い、ゴール前の守備が甘い、切り替えが遅い、といった課題が同時に見えたとき、どれを最初に取り上げるかの優先順位を決めるのが難しい。全部を一度に練習しようとすると何も身につかないし、ひとつに絞ると「他の課題は放置するのか」という気持ちも出てきます。
ここだけで1記事書けそうなくらい悩ましいポイントなのですが、今日は練習メニューの話に進みます。

練習でぶつかるリアルな壁
課題を抽出してトレーニングを設計しても、いざグラウンドでやり始めると次々と壁にぶつかります。理論と現実のギャップを痛感するのはいつもここからです。
ひとつ直したらひとつ忘れる
前の試合でプレスのかけ方に課題が出たので、次の練習でプレスの局面を重点的に取り上げました。選手たちの動きが少しよくなって「よし」と思っていたら、次の試合でプレスはよくなったのに今度は切り替えの部分でバタバタしていました。プレスを意識するあまり、切り替えのタイミングへの意識が薄れてしまった感じです。
ひとつの課題に集中して取り組むと、前に修正した部分が疎かになる。これを繰り返しているうちに「前回やったことが今回消えている」という状態に陥りやすくて、繰り返しと復習をどうスケジュールに組み込むかが、MTM方式を回していく上でずっと悩んでいる部分のひとつです。
練習が地味で飽きてしまう
局面を切り取ったトレーニングはどうしても単調になりやすいです。同じシーンを何度も繰り返すことで身体に覚えさせるのが目的なので、地味になるのはある意味仕方がないのですが、小学生にとっては「またこれか」という飽きが早くやってきます。
「コーチ、これやろーよ!」と別のことをやりたがる選手が必ず出てきます。そこで流れに乗せてしまうと練習テーマが崩れるし、かといって「ダメ」と言い続けても雰囲気が悪くなる。全員を練習のテーマに向かわせながら、かつ楽しませるというバランスをとるのは本当に難しくて、毎回どうしたものかと悩みながらやっています。これはもう永遠の課題かもしれないです。
スキルがバラバラで全員に合わせられない
チームの中でスキルには幅があります。同じトレーニングをしても、すでにできてしまっている子には物足りないし、まだできていない子には難しすぎる。全員が「ちょうどいい負荷」を感じる練習メニューを一本で作るのはほぼ不可能に近いです。
レベル別でグループを分けることもあるのですが、それはそれでコーチの手が足りなくなったり、下のグループに入った子のモチベーションが下がったりという問題も出てきます。誰かに合わせれば誰かにとって最適ではなくなる、このジレンマはずっとついて回っています。
局面練習が試合でなかなか出てこない
練習でできていても試合では出てこない。これはジュニア年代あるあるだと思います。局面を切り取ったトレーニングで動きを覚えても、試合の流動的な状況の中でそれを選択するのは別の難しさがあります。局面の認知、判断、実行というプロセスが練習よりずっと速い速度で要求されるので、当然といえば当然なのですが。
練習でできることが試合で出ないと、選手も「やったのに」という消化不良感が残るし、こちらも「どう結びつければいいのか」と頭を抱えます。このギャップを埋めるためにゲーム形式の練習を増やすと、今度は局面の反復が減って元に戻るという堂々巡りになりやすくて、正直まだ答えは出ていません。
それでもMTM方式を続けている理由
難しいことだらけですが、MTM方式の考え方自体は手放せないと思っています。少なくとも「なんとなくの練習」よりは、試合という事実から出発している分だけ根拠があります。選手たちも試合との繋がりが見えるので、「なんでこれやるの?」という疑問が出にくいです。
それに、うまくいかない経験も含めてサイクルを回し続けることで、少しずつ自分の中に引き出しが増えていく感覚はあります。あのときのプレスの練習が3回目の試合でようやく出てきた、みたいな瞬間がたまにあって、そのときの手応えがあるから続けられている部分も大きいです。
今のところこうやって乗り越えています
飽きの問題には、同じテーマを別のメニューで繰り返すことを意識するようにしました。ルールを少し変えたり、人数を変えたり、エリアを変えたりするだけでも選手の反応は変わります。テーマは変えずに「外見を変える」イメージです。「コーチこれやろー」と言い出す選手には、タイミングを見てそのリクエストを練習の後半に少し取り入れることで、前半のテーマ練習に乗ってもらいやすくなった気がしています。
「ひとつ直したらひとつ忘れる」問題には、月単位で大まかなテーマを決めておいて、週ごとの課題をその中に収める意識を持つようにしました。完全には解決していないですが、場当たり的な練習になりすぎるのは少し防げるようになりました。正直まだ試行錯誤の途中で、これが正解とは言えないのですが。
完璧な練習メニューなんてたぶんない、という話
MTM方式を意識するようになってから、練習前の準備の時間が増えました。試合を振り返って課題を整理して、それに合ったメニューを考えてグラウンドに持っていく。でも実際に始まるとその通りにはいかなくて、その場で修正して、また振り返って…を繰り返しています。
完璧な練習メニューを最初から用意しようとするのは、もうやめました。どんなに考えて準備しても、選手の状態やその日の雰囲気によって変わることのほうが多いので。それよりも「今日この選手たちに何を持って帰ってほしいか」という一点を軸に置いて、あとは臨機応変に動く方が自分には合っていると感じています。試行錯誤はたぶんずっと続きますが、それがコーチの仕事のほとんどなんだと思うようにしました。


